昨今の医療機器(デバイス)の技術革新は目覚ましく、医療現場のニーズに応えるべく、日夜、新たな製品が開発されております。このデバイスの進歩により、特に内視鏡外科領域では、腹腔鏡手術はさらなる高みに到達し、ロボット手術の普及が現実となりました。今日、外科手術におけるデバイスは確たる地位を築いており、今後もこの傾向はさらに増すものと予測され、外科医がデバイスの特徴を熟知し、取捨選択をすることがこれまで以上に求められます。しかし、各々の企業が類似のデバイスを開発しており、新たな製品が次々と登場することから、その潮流に乗って各デバイスを比較検討することは、一般的には多くの努力が必要とされます。ひいては外科領域全体となると、各人の努力だけでは困難であるため、客観的指標に基づいた製品評価が求められております。
一方、これほどまでに内視鏡外科手術が普及したにも関わらず、ポートやエネルギーデバイスなどデバイス自身の基本原理を網羅的に記した成書はこれまでにありません。デバイスの誤った使用方法などで医療現場に混乱をきたしていることも事実であり、デバイス各々の原理を考慮した使用方法によって手術成績が改善すると考えます。
NPO法人国際健康福祉センター(IHWC)は、以上のような認識に基づき、デバイスの適正選択及び適正使用に基づく外科手術の質の改善を目的とし、デバイスカタログプロジェクトを始動いたしました。本プロジェクトの一環として、デバイスの基本原理に加えて、機能や材質、コストパフォーマンスなどの観点から実際の製品比較をまとめたデバイスカタログを作成し、これを基に意見交換や情報の深掘りとアップデートを目的としたデバイス研究会を開催いたします。カタログ情報は更新して定期的に改訂していくとともに、リアルタイムかつ双方向に全ての医療従事者と情報を共有して、実際の医療現場にフィードバックできるネットプラットフォームの構築を目指します。これらの活動が、外科手術の安全と質の向上、若手外科医の教育、さらには新たな機器開発につながり、少しでも国内外の医療レベルの向上に寄与できればと考えております。
特定非営利活動法人国際健康福祉センター
デバイス研究会 会長
板野 理
現在、科学技術の進歩により様々な新しい手術用デバイスが開発され、また改良がおこなわれています。それに伴って手術を含む外科手技は年々高度化し、様々なデバイスを適切に使用することが重要となっています。また新しい外科治療法を開発するためにも、現在のデバイスをその理論から理解し、長所、欠点を把握することが不可欠です。
しかし、その情報を得る方法はいままで著しく制限されてきました。ほとんどの外科医は、もともと病院にある機器を先輩から使い方を教わり、新しいデバイスの情報を学会で、時に各メーカーの営業の方より仕入れて、その長所のみの情報を仕入れるしかありません。使ってみてわかる短所を他の外科医と情報交換する場所もありませんし、他の競合デバイスとの客観的な比較をする機会もありません。
病院の購買担当部署にとっても、手術用デバイス選定と購入は大きな仕事と思われます。現在は、各外科医が自分の好みによって値段を考慮せずに購入希望を出してくる場合がほとんどだと思われます。そのデバイスは本当に必要なのか、すでに購入している機器では代用できないのか、実際の売り上げから言ってペイ可能なのか、業者からの提示金額は本当に妥当か、など様々な要素に対して、検討する資料がありません。
本企画では、上記のような問題を解決するため、各手術デバイスを種類別にその機能と価格を比較するカタログをつくることにしました。各デバイスの項の初めには、その基本性能の簡単な解説をつけ、手術デバイスの基本知識を得るための教科書的な役割ももたせました。その後に各商品のサイズや性能、価格、グレード別の違いなどの商品情報の詳細と競合商品との比較を記載し、実際に現場で使用している外科医の意見による具体的な評価を加えました。これにより、使用する医師、看護師、臨床工学士の皆さんや病院管理部門の購入の際に、欠かすことのできない情報が出来上がったと確信しております。
今回の初版作成にあたり、なるべく医療現場で必要とされているデバイスを網羅し、公平かつ客観な評価を行うように努めましたが、膨大な作業量と時間の制約の中、まだまだ不十分なところ否めません。読者の方には、内容に異論がある方もいらっしゃると思います。このプロジェクトは、これをスタートとして今後全国の全ての医療関係者の方より情報、意見をいただき、よりよい情報ソースと進化させていきたいと考えております。ご興味のある方は是非、後に募集しているデイバス研究会に参加して、活動のご協力いただければと存じます。
最後に、本書作成にあたり、情報提供に快くご協力いただいた企業の方々に心より御礼申し上げます。
〔 書籍概要 〕
●書籍名 | 『 手術室デバイスカタログ 』 |
●著 者 | 国際健康福祉センター(IHWC)デバイス研究会[編著] |
●発行元 | 金原出版株式会社 |
●発行時期 | 2022年 4月中旬 発売予定 |
●読者対象 | 外科医(一般外科、消化器外科、胸部外科、婦人科、泌尿器科)、手術室看護師、臨床工学技師、病院の購買部門、メーカー教育研修部門 など |
●ページ数 | 444 ページ |
●判 型 | B5 判/4色オールカラー |
●定 価 | 8,250円(本体7,500円+税10%) |
〔 CONTENTS 〕
第1部 | エネルギーデバイス・電子機器電気メスジェネレーター 超音波凝固切開装置 ベッセルシーリングシステム 電磁波による焼灼療法機器 ほか |
第2部 | 大型機器・基本鋼製機器 手術台 体位固定具 開創器 剪刀 鑷子 鉗子 持針器 ほか |
第3部 | 内視鏡手術機器 内視鏡システム 気腹・排煙装置 トロッカー 内視鏡手術鉗子 クリップ ほか |
第4部 | 内視鏡手術消耗品 小切開創縁保護・開創部密閉器具 検体回収袋 組織圧排子・リトラクター ほか |
第5部 | 消耗品 ドレーン/ドレーンパッグ イレウス管 肝胆膵手術で用いるチューブ 縫合糸 ほか |
第6部 | 手術中に使う薬品 癒着防止材 止血材 組織接着剤 消毒液 |
〔 ご購入方法について 〕
◎ 金原出版ホームページ
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307204323
*電子書籍の販売も予定しています。
詳細は上記の紹介ページ内にて発行日以降にご案内予定です。
※ 上記の他、全国の書店、オンライン書店でもご予約、ご注文が可能です。
デバイス研究会では今後、以下のような活動を予定しています。
● | 2024年4月出版を目標に、対象診療科、デバイスの種類と数をさらに拡大し、評価方法を改善した『手術室デバイスカタログ』第2版 の作成を行います。 |
● | 『手術室デバイスカタログ』の内容を基に、個別の種類の情報をさらに掘り下げた研究会を開催します。 |
● | 『手術室デバイスカタログ』の内容を基に、最新のデバイス情報を使い方動画や掲示板を用いて、リアルタイムかつ双方向に情報を共有するウエブサイト作成を行います。 |
デバイス研究会では、活動趣旨に賛同くださる医療関係者(医師、看護師、医療工学士、医療系企業の方)の方々より、無料会員を募集いたします。(注:NPO会員ではありません)
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